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(妄想小説)Gemini -二価染色体 第6話 ▷教導 [妄想小説]

 誠一郎は、思い切って誠次郎の淫らな姿を撮影し、DVDを送ってきたであろう人物にコンタクトを取ろうと思った。そして茶封筒の送り主宛に、逢って欲しいと手紙を書いた。返事が来たのは、それから1週間後だった。
「なぜ、それ程誠次郎君の性癖に執着するのか?死者に、鞭打ってまで、なぜ自己満足をしたがるのか?ワシには、お前に話せる話など何もない」
 そう書かれていた。

 手掛かりがなくなってしまう。誠一郎は、どうしても自分の心の中にある疑問に対しての答えが欲しくて、茶封筒の住所を頼りに尋ねて行った。
 送り主である原省蔵の家は、東京の外れ、東京とは思えない程山奥に入ったところにあった。昔庄屋の住んでいた家だろうか、白い壁で囲まれ、まるでお寺のような門構えだった。門のすぐ右の勝手口のインターフォンを押して、自分の名前と尋ねてきた用件を話した。しばらく間があって、門が開き中から、誠一郎より少し年上だと思われる堂々とした体格の坊主頭の男が出て来て、敷地内に招き入れてくれた。
「この人が、原省蔵さんだろうか?」
 そう思いながら、男の後について中に入ると、広い敷地の中央に、瓦葺きの立派な豪邸が建っており、その左手に、誠次郎がいたぶられたであろう蔵が建っていた。居間に通され、テーブルに着くと、男がお茶を出してくれた。
「先生は、すぐお越しになります。こちらでお待ちください」
 男は、そう言って頭を下げると、すぐに奥に引っ込んだ。

「お待たせしたな!」
 そう言って表れたのは、肌つやは良いが、深いしわが刻まれた、もう70過ぎと思われる小柄な老人だった。
「あまりに、爺さんでびっくりしたか?」
「いえっ!この度は、お忙しい中、突然押しかけて・・・」
「そんな挨拶は、どうでも良いっ!何故、お前は、SNSで忠告したにも関わらず、誠次郎君のことをあら探しするんだ?それを知ってどうする?」
「ぐっ・・・」
 言葉が出なかった。正直に話そうと思った。
「遺品の整理をしている中で、先生から送られてきたDVDを見ました。そして、誠次郎のその姿に驚くと伴に興奮し、ついに勃起までして・・・。そして動画を見ながら自分でチンポを扱いて逝ってしまった自分がいました。答えを知りたいのです。なぜ、誠次郎はあれほど責められているのに、勃起するのか?そして自分は、なぜ弟の淫らな姿に、勃起してしまうのか?もしお判りなら教えて頂きたいのです」
「本当に、お前は自己中心的で、我が儘な奴じゃな!確か、教師だと聞いたが・・・。なぜ、もっと周囲を見回し、自分を見つめ、答えを見つけようと努力しない!そんなことで、良く教師が務まるなあ・・・。自分のことすら理解できない奴に、人生を教わる生徒達が可哀想だ。それに、もしお前に答えを教えたとして、それがお前が納得できる自分好みの答えでなかったら、それでも素直に聞けるのか?いや〜っ、今のお前では、そんなことはないと深く考えもせず否定するだけじゃ!お前は、自分が好きな答えしか、見つけようとしていない!そんな奴のために、なぜ否定される答えを教えなければならない!」
 誠一郎は、省蔵の言葉にぐうの音も出なかった。
「もう一度、よおく自分の心を見つめ直すことじゃ!それでも知りたいと思うなら誠次郎と同じ経験をせねば、その本質は判るまいて・・・。今のお前に、その覚悟があるのか?自分が楽に生きるために、死者の遺志を無視して、人の隠し持った性癖をあら探しするような、そんな女々しいお前に、どうして、そんな覚悟ができようか?・・・ならば忘れる事じゃ、月日は、全てを忘れさせてくれる」
 省蔵は、そう言って誠一郎を諭した。
「誠一郎君とか言ったかなあ・・・。ほんに、よお似ておる。だが誠次郎君には、確固たる覚悟があった。体つきはお前の方がガッチリして男らしいかもしれんが、お前は女々しい奴だ。お前には、誠次郎君と違い、覚悟がない。出直してくれっ!ワシは、こう見えてこっちの世界じゃ有名でな・・・。逢いたい、責めてくれと訪ねて来るお客人がひっきりなしなんじゃ。今日のことは、誠次郎君のことがあったからこそ、仕方なしにお前に逢ってやった。じゃが、次からはお前の都合には合わせん!人にものを頼む時は、まず相手の都合を聞いてから訪ねることじゃな!お前は、そんなことすら出来ない甘えん坊のガキじゃ!帰れっ!おい!客人がご帰宅じゃ!玄関まで、お送りしろ!」
 省蔵に、一括され追い返された。省蔵の一言一言が心に突き刺さった。

 誠一郎は、これまで作り上げてきたものを土台から、根こそぎひっくり返されたように思えた。
「俺は、世間や、社会から見たら、まだ甘えたのガキなのか?何故、ああまで言われたにも関わらず、まだどこかに何かが引っかかってる感じがするんだろう・・・。なぜ、俺は誠次郎の淫らな姿に興奮したんだ?もしかすると俺の中にも、誠次郎と同じものを持っているのか?俺は、誠次郎のようになりたいのか?俺は、実は一皮剥けば誠次郎と同じどMなのか?判らない!考えれば、考えるほど判らない!俺は、どうしたら良いんだ。答えを求めることは間違いなのか?このモヤモヤを抱えたまま、黙って生きるのか?原さんは、本当に知りたかったら誠次郎と同じ経験をしろと言った。俺は、縛り上げられ、鞭打たれ、見知らぬ男に小便掛けられても、答えを知りたいのか?????判らない!どうすれば、どうすれば、良いんだ・・・俺は・・・俺は・・・俺は・・・・・」
 省蔵を訪ねてから以降、職場から戻るっても、しばらくの間ずっと省蔵の言葉が胸に突き刺さっていた。誠一郎は、毎晩のように考え、悩み続けた。眠れない夜が続いた。そして結論がでないまま10日程が過ぎた。
「今の俺には、女々しいと言われようが何と言われようが、誠次郎のように縛り上げられ、鞭打たれることに耐えるだけの覚悟なんてない。ならば取り敢えず誠次郎の本当の心、いや俺自身の本当の心を知るために、これまで誠次郎の経験してきたことのうち、今の俺でも出来そうなことから同じ経験をしてみよう」
 誠一郎は、そう決心した。
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