SSブログ

(妄想小説)2人のパトロヌス 第1話 [妄想小説]

 高度経済成長期を迎えた昭和30年代から40年代。トラックによる輸送が始まってはいたが、未だ日本国内の長距離運輸に関しては、国鉄が主に担っていた時代の話。

「健ちゃん、今日は学校から帰ったら何をして遊ぶ?」
 小学校から集団下校している途中で、今年3年になった近所の伸吾が、聞いてきた。
「そうだなあ・・・。この間から、1年の陽一がかくれんぼしようって煩いから、今日はかくれんぼだな。じゃ、宿題済ませたら、皆うちの庭に集合!必ず、宿題済ませてからだぞ!」
「は〜い!」
 近所の下級生5人が元気に手を上げた。

 健太は、この小さな町に唯一ある駅で駅員として働く父親と保育所の保母をしている母、そして、今年高校3年になった兄の凌介の4人家族で、駅裏にある国鉄の官舎に住んでいた。田舎の小さな駅とは言え、昭和30年代には、地域の人と荷物を運ぶ公共交通機関として、曲がりなりにもこのローカル線では2番目に大きい駅だった。そのため貨物の引き込み線と保線区員の詰め所も駅舎とは別に設けてあった。それでも、徐々に近代化と経費削減の名の下に、機械化が少しずつ進んでいたが、健太が幼稚園の頃には、まだ駅員5名と保線区員6名がいて、賑やかな駅だった。

 健太は、皆が国鉄の制服をしっかり着ている駅舎の固い雰囲気より、仕事がない間は、シャツやステテコ1枚だったり、時には上半身裸で、呼び出しを待つ保線区員の詰め所の緩い雰囲気の方が好きだった。そうして日頃は、ダラダラと過ごしている男達が、一旦、作業を命じられると、作業着に着替え、全員頭にヘルメットを被り、ツルハシなど銘々の道具を持って保線用車両に乗り込んでいく姿が格好良いなあと憧れていた。だから時間があるといつも保線区員の詰め所で過ごしていた。また保線区員達は、駅員と比べるとガタイが大きく厳つい顔をしたおやじ連中ばっかりだったが、皆が気さくで、健太が詰め所を覗くと、気がついた誰かがすぐに手招きして呼び入れてくれ、そのおやじの膝の上に抱えられて、決まってジュースやお菓子を貰っていた。
 そんな駅も健太が小学校の高学年になる頃には、機械化が進み、徐々に人が減らされ、今では駅長と助役、そして健太の父親の3人の駅員と、そして昨年ついに1人だけになった保線区員だけが残る、寂しい状態になっていた。
 そのため昔の名残で、広めの敷地に多くの官舎が建っていたが、今ではほとんど人は住んでおらず、近所の子ども達の恰好の遊び場となっていた。
 その日の宿題を済ませ庭に出ると近所の子ども達が集まっていた。ジャンケンで鬼が決まって100数え始めたところで、銘々がいろんな場所に散らばった。健太は、いつもの秘密の隠れ場所に向かった。 そこは、国鉄の独身寮として使っていた官舎の裏側で、隣の石材所の石材置き場になっている場所だった。バラバラに置かれた大小の石材の一角に健太がするりと入り込める隙間があって、こっちからは近づく人がすぐ見えるが、反対側からは気づかれにくく隠れるのに最適な場所だった。 潜り込んでのんびりしていると目の前の独身用の官舎の窓がガラガラと開けられた。

「あっ、悟兄ちゃん帰ってきたんや!」

 帰って来たのは、この小さな駅に一人残され保線区を担当している片山悟だった。3年ほど前に、この駅の担当になったばかりで、父親の話によると東京の大学でラグビーの選手として、将来を嘱望されていたが、卒業前の試合でケガをしたため、卒業後は地元に戻り、親戚のつてで、6年前に保線区員になったという話だった。道理で、ほかの保線区員のおやじ連中より、二回り以上も身体がごっつくて力自慢だったが、その割に人当たりが良く、同じ恰好してても、どこか垢抜けた風情で、健太を見掛けると、いつも優しい笑顔で頭撫でてくれたり、都会の面白い話を教えてくれたりしてくれたので、健太にとっては憧れの兄貴だった。

「はあっ、今日は疲れたなあ・・・」
 悟は、自室に戻り、縁側に面した窓を開け放つと縁側に座りタバコに火を付けた。
 大学を卒業して6年。この間に、もちろん仕事には慣れてきたが、経費節減とやらで、人はどんどん減らされ、逆に建設当時から随分と年数の過ぎた線路や設備の老朽化が進行し、その分これまで以上に仕事量は増え続けていた。毎年のように組合が、ストを打ち、交渉しているが、目に見えた結果は、返ってきていなかった。

 また、東京での暮らしと比べると田舎の生活は退屈だった。東京は、刺激に溢れた町だった。ゲイとしての自覚は、高校の時からあった。しかし、それはいけないことだと心の奥底に押し込めていたはずだった。それが、ラグビー部の下級生が面白がって部室に持ち込んだ当時創刊したばかりのゲイ雑誌を見た瞬間にはじけ飛んだ。誰も居ない部室で、必死に読みふけった。そして、それからは雑誌の巻末に書かれていた書店で、毎月のように購読し、読みあさった。さすがにラグビー部を引退するまでは、派手に遊ぶことはなかったが、引退するとそれまでの時間を取り戻すかのように、雑誌に書かれていた発展場で遊び狂った。どの発展サウナや、野外の発展場、発展トイレでも、若くガタイの良い悟はモテた。そして誰もが悟のガタイを褒めちぎり、悟に尽くしてくれた。そうした経験を通して、いつの間にか、人に見られることに喜びを覚えるようになってしまっていた。
 ところが、こんな田舎じゃ、発展場どころか、ゲイ雑誌すら手に入れることは難しい。学生時代に買って大事に取っておいた雑誌を、何度も読み返した。時には、雑誌社から最新号を取り寄せ、よほど文通欄で誰かと知り合おうかとも思ったが、実家に近いこんな場所で、ゲイがばれることを想像すると、それ以上何もできなかった。ただただ雑誌を読みふけりながら、オナニーに明け暮れる日々だった。

 初めてこの駅に配属になった頃、先輩駅員の次男の健太が、悟に懐き、しょっちゅう保線区員の詰め所に来ては、悟の膝の上に跨がると、裸の悟の胸を、おっぱい大きいと毎日のように揉んだり、乳首を摘まんだりしてきた。あの時ばかりは、健太の柔らかい尻に押しつぶされたチンポが勃起しそうになってしまい、必死で別のことを考えてごまかした。そんな健太も小学生になると、保線区の詰め所に寄りつきもしなくなった。誰も居なくなった詰め所で、一人仕事の指示を待っている間に、作業着に着替えすため服を脱ぐと、詰め所で全裸になったことに興奮してしまい、誰かの覗かれることを期待しながらチンポを扱いたこともあった。またこんな姿を見られるのなら、健太でも良いと、官舎側に向かって大股開きで、オナニーしながら、突然健太が訪ねて来ることを想像し、大量のザーメンを吹き上げたこともあった。
 そんなことをふと思い出しながら、「はあっ・・・」とため息をつきながらタバコを消し、立ち上がろうとした時に、目の前の石材の隙間から健太が覗いていることに気がついた。 突然、心臓がバクバクと鳴り始め、チンポがむくむくと頭をもたげ始めた。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。