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(妄想小説)Firefighters 第1話 [妄想小説]

 「豚も煽てりゃ木に登るっつうけど、お前の場合、豚も煽てりゃはしごに登るって奴だな!」
 今年の出初め式で、この地域伝統の褌姿でのはしご登りの演技を復活させたお陰で、飯田武士はこの町で誰も知らない人がいない程、有名になった。何せその姿を写した写真が、町の広報誌の表紙飾ったり、その日のテレビのローカルニュースではしごの上の演技が流れたため、はしご登り熊さん、改め木登り熊さんとして一躍有名になった。

「しっかしよ、あん時きゃきつかったなあ・・・。100kgの奴のはしご登り支えたって、日本中でも俺たちぐらいだぜ!」
「普通よ!歳もそうだが、身軽な奴選ぶもんだ・・・よりによって豚選ぶってよ・・・」
「んでさ、頑張って支えて見上げて見りゃ、毛深い豚のチンポだろ、腰抜けそうになったわ!(笑)」
「何言ってんだ!あれは本番前の練習ん時に、生まれて初めて褌締めて、締め方よく判ってなかったから、緩んでチンポがポロリしたんだろ!それに伝統のはしご登り復活させたいって爺さん連中が言うから、俺が仕方なしに必死で覚えたんだろが?それとも、はしごの上で逆立ちや、横字懸垂できる奴が爺さん連中の中にいるんか?いねえから一番年下の俺がやらされたんだろ?しかもよ、あの寒さの中でよ褌1枚で、禊ぎだっつうて、冷水被らされてから登るんだぜ!爺さん連中は、まだ纏着れるから良いけど、褌だけの俺は低体温で死ぬっつうの!」
「ところでよ、お前嫁さん貰う気ないんか?良い相手いねえんなら、誰か紹介すんぞ!それこそ、褌だけで冷えた身体温めてくれっぞ!(笑)」
「爺さんに心配されるようになるってなあ・・・。俺も落ちたもんだぜ!身長185cmで体重105kg、若干32歳のこのマッチョで堂々とした男臭い身体に、このキリリと渋い2枚目の顔だろ?相手は、掃いて捨てるほどいんの・・・。皆が俺を離してくれねえから、1人に絞れないだけなん!」
「へえっ、そうですか?最近の姉ちゃんは、お前みたいに毛深いゴツゴツした熊みたいな奴より、お肌ツルツルの細身のシュッとした2枚目のがモテるんじゃねえのか?」
「それにしちゃあ、お前、いっつも1人で釣りしに山奥行ってるじゃねえか!そんな幻覚でも見てチンポ扱いてるんじゃねえのか?」
「がっ・・・、このお・・・」
「まあ、まあ、まあ、まあっ・・・。本当、お前らいつまでたっても子どもみたいな喧嘩するなあ・・・」

 武士の周りにいる5人の先輩消防士は、武士が子どもの頃からよく知っているおやじ連中だった。そして彼らは、武士にとって子どもの頃から憧れ続けてきたヒーロー達だった。母子家庭で育った武士にとって、父親の代わりだったのかもしれない。それは幼稚園の時から始まった。
「火事です!火事です!皆さん、先生の指示に従って、すぐに逃げましょう!」
 幼稚園で火災訓練が行われた。教室に模擬の煙が入ってくると、キャーキャー言いながら、泣き出した大勢の友達と一緒に、煙の充満する幼稚園の教室から逃げた。武士も、今にも泣き出しそうな程怖かった。そこにサイレンを鳴らして消防車が到着。そして真っ赤な消防車から降り立ったシルバーの消防服を着た男達が、てきぱきとホースを伸ばし、一斉放水をし、幼稚園の火災を鎮火してくれた。
「助かった!消防士のおじさん達が助けてくれた!」
 それ以来、武士は真っ赤な消防車と消防士のおじさん達の絵ばかりを描いた。そして住んでた村営住宅の近くに消防署があったため、幼稚園から戻ると、武士はいつも消防署を覗きに行くようになった。武士が覗くと、毎日のように真っ赤な消防車の横で、おじさん達は身体を鍛えていた。ちょっと怖そうなおじさん達だったが、武士を見つけると、みんなが武士に声を掛け、一緒に遊んでくれたり、ジュースを飲ませてくれたりして可愛がってくれた。武士もおじさん達を真似して、小さな木の棒を持ち上げおじさん達のトレーニングを始めた。すると次の日には、武士のための小さな軽いバーと重りが用意され、おじさん達に紛れ一緒にトレーニングして遊ぶようになった。武士にとって、そこは幼稚園から帰ってからの遊び場だった。トレーニングが終わると、手の空いたおじさんが一緒にお風呂に入れてくれた。初めて見る鍛えた男の裸に、子どもながら興奮し、おじさん達に抱きついた。武士の男に対する興味は、ここから始まったのかもしれない。そしてそれが決定的になったのは、正月のはしご登りの演技だった。鍛えた逞しい身体のおじさん達が、褌いっちょうの姿ではしごに登り、演技をした。真冬にも関わらず、おじさん達の身体からは湯気が出、褌だけの裸が格好良かった。厳つくて逞しいけど優しいおじさん達が、武士の初恋の相手だった。

 小学から中学の間も、武士は事あるごとに、消防署に通い、おじさん達と一緒にトレーニングに励み、消防署で宿題をするようになった。勉強も、判らないところがあると、皆が親切に教えてくれた。お礼にと武士は消防署内のホースや道具の整理の仕方、そして扱い方を学び、片付けを手伝った。それは、武士が高校に進学するまで続いた。高校に進学すると、さすがに以前のように気安く消防署を覗くことはなくなったが、武士を見掛けると、おやじ達は、気軽に声を掛け近況を訪ね、悩みがあると一緒に考え悩んでくれた。その頃から消防士のおやじ達は、武士の父親代わりから性の対象へと変わりつつあった。武士がチンポを弄り始めると、いつもおやじ達の裸が頭に浮かび、いけない事だと思いながらもおやじ達の裸を思い出してはチンポを扱いた。
 1人でいることが好きだったその頃の武士の趣味は釣りだった。川を上り岩魚やヤマメ釣りを楽しんでいた。その時、川に沿って山の奥まで入ったところで、一つの滝を見つけた。小さな川の源流だったが、それ程水量も多くなく、また両側を崖で囲まれたその滝は、滝口まで行こうと思うと、川を遡上するしか方法がないため、誰1人来る人もおらず、武士だけの秘密の場所となった。それ以降何か悩みがあるとその滝に行き、冷静に物事を見つめる場として、そしてまた時には自然の中で、1人気持ち良く逝ける場所として、時々その滝まで行くことが増えた。

 成績優秀だった武士は、町の奨学金で、都会の大学に進学するよう進められたが、母親1人残しここを離れることを嫌がり、結局電車で3時間掛けて、県内の大学に通った。その頃には、卒業後は消防士になることを決めていた。
 だが村の消防署の消防士の募集は、ここ10年近くなかった。県内の都市部の消防士になろうかとも考えたが、母親のこともあり、また武士自身も生まれ育った村の消防士になりたかったことから、一旦は母親と同じ役場の職員として大学卒業後は勤め始めた。翌年になり、市町村合併で隣近所の村が合併し、町になったが、武士の住んでいた村が、ほぼ地域の中心にあったことから、ここの村の消防署がそのまま町の消防署になった。その事もあって、10年ぶりに消防士の募集があった。大学を優秀な成績で卒業した武士は、役場のエリート職員として将来を嘱望されていた。そんな武士が消防士に応募したことで、惜しむ声も多かったが、何よりも先輩消防士達が、喜んでくれたことで、武士の決意は変わらず、そして町で初めての第1種消防士の試験に合格し消防士となった。
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