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(妄想小説)新 桃太郎伝説…その11 [妄想小説]

 鬼塚さんは、反省して自首したいと言い出す。そしてちゃんと罪を償ったあとで、きれいな身体で戻ってくるから待ってて欲しいと。鬼塚さんのやったことは悪いことだ。だけど今じゃ、ちゃんと反省してるし・・・。襲われた人達にも、悪いとこがないわけじゃない。罪は償わなくちゃならないけど、なるべく軽いものになって欲しい。どうしたら・・・。4人は頭を悩ませた。

「遠山さんに事情を話して相談してみよう・・・」
 桃太は、そう呟くと寝ている遠山さんに悪いと思いながらも、遠山さんの携帯の番号を押した。
「どうした?こんな早くに?お父さん達に何かあったのか?」
「いやそうじゃないんです。遠山さんに相談に乗って欲しくて・・・。実は、あの例の鬼の強姦事件の犯人見つけたんだ。んで、その鬼さんが自首したいって言ってて・・・」
「えええっ、それでお前、襲われたのか?ケガは?無事か?大丈夫か?今、どこにいる?」
 いきなり遠山さんが、立て続けに聞いて来た。
「大丈夫!特に、大きなケガないよ!それより・・・。その犯人には、犯人なりの事情があって、できたら、なるべく罪が軽くなるようにできないかと思って・・・。本人も自首するって言ってるんだけど・・・」
「電話じゃ、埒が明かん!今から、すぐそっちに行く!場所は、どこだ?それとお父さん達には連絡したんか?」
「まだ!これから直接、自分が連絡する。ただ遠山さん!あまり仰々しいの嫌なんだ、鬼さんの今後のこともあるし・・・」
「判った!もう一人だけ部下連れていくが、パトカーじゃなくて、覆面で行くから・・・」
 そう言って、遠山さんは電話を切った。

「んでも、今日のことも聞かれるよな・・・」
「みんなにも聞かれるだろうし、怒られるだろうな・・・」
「取り敢えず、公園行ったことは仕方ないから正直に話そう。後、鬼塚さんの罪が増えないように、俺たちが殴られたり、気絶させられたっつうのは、内緒にして、囮捜査で襲われかけたけど、こっちは4人いたんで、逃げられて、んで必死で追い掛けて、説得したってっつうのはどうだろう?」
「ちょっと無理あるけど・・・。それしか仕方ないよね・・・」
「桃太捕まって暴行されたってことを無視すれば、それ以外じゃ、ほぼ嘘はついてないし・・・。いいんじゃない!」
「ねっ、鬼塚さんも協力してね!」
 少しでも自分の事を思って、罪が軽くなるように相談する4人に、鬼塚は、その気持ちが嬉しくて涙がこみ上げて来た。でも、それに甘えてちゃだめだ。ちゃんと正直に話すと言うと・・・。
「鬼塚さんのためだけじゃないんだよ!これまでの事は、本当にちゃんと正直に話して欲しい。ただ、今夜の僕たちとのことは、さらに暴行や傷害増やしてまうし、それに俺、まだ一応未成年だからさ、未成年誘拐拉致とかって罪が重くなると思うんだ。それとエッチしたことも、淫行っつうの?鬼塚さんだけじゃなくて、変な噂立っちゃうと、ほら僕たちの将来のこともあるじゃん!だからねっ、協力してね!っつうか、協力してくれないと家来にしてあげないぞ!」
 そう言って笑うと、桃太たちが、世間のどうしようもない噂ごときに動じない連中だとは判っていたが、その優しさが嬉しくて、ウンウンと鬼塚さんは泣きながら頭を下げた。

 工場の表で待っていると、程なくして、遠山さんが部下を1人連れてやってきた。
 そして、その場で打ち合わせのとおり話した。どこでどうなったと詳細を聞かれたが、ここまで追い掛けて、ここで説得したと話した。
 遠山さんは、疑ってるようだったが、桃太の言ったとおりに、調書作るように、部下に言った。鬼塚さんについては、自首してきたという扱いで、これから警察署まで一緒に行って、そこで事情聴取されることになった。
 そして今回の犯人を捕まえたと先輩にも一応連絡を入れた。
 警察署に着くと、警察署の玄関のところでお父さんと父、そして先輩が待っていた。
 そして遠山さんと一緒に鬼塚さんが車から降りると、先輩がツカツカと鬼塚さんに近付きいきなりほっぺたを思いっ切り平手で殴った。慌てて桃太と犬介が先輩を取り押さえた。
「先輩、落ち着いて・・・」
「なんで!なんでなんだよ!どうしてあんな乱暴なことするんだよ!もっと、もっと優しくして欲しかったのに・・・」
 先輩の目から涙がこぼれ落ちた。
 そして呆気にとられる桃太の腕をすり抜け、鬼塚さんの胸に飛び込み抱きしめた。

「ふぇっ?????」
「ど、どっ、どういうことなの?????」
「俺っ、公園でこの人見掛けた時から、ずっと好きだったんだ。ごっついガタイしてるし、強面で毛深いけど、時々、妙に優しい顔するしさ。ただ、この人のファン多かったし、そのうち大勢に回される様になってくると、どうせ自分みたいな若造好みじゃないんだろうからって、自棄になって、それだったら1回だけでもやらせてもらおうって、みんなに回されてることに参加して、やさせてもらった。でも家に戻ると、なんだか寂しくて、悔しくて・・・。忘れなきゃって・・・。それで、それ以来、公園で会っても、ぷいっと横向くぐらしかできなくなって・・・。それが突然、あんなふうに強姦するみたいに・・・。それだったら、もっと優しくして欲しかった・・・。好きなんだ、俺の初恋なんだ・・・。今でも、好きで好きで仕方なくて、忘れられないんだ!」

 遠山さんが、すっかり頭を垂れた鬼塚さんの背中を押して、警察署の中に入っていった。
「お父さん、なんとかならないの? 被害者だと思ってた先輩も、被害者って訳じゃないし・・・」
「大丈夫だよ!たぶん今回の件は、被害届も出てないし、事情聴取されるだけですぐに開放はずだよ!」
 そう言って、桃太の肩を抱いた。

「ところで、桃太!なんでお父さんや父に、内緒でこんなことをしたんだ?言ってくれれば、お父さん達も力になれたのに・・・。下手したらケガぐらいで済まないことだってあるんだぞ!」
「ごめんなさい!どうしても自分の力で片付けたかったの、先輩のこともあったし・・・。それにお父さん達に言ったら、絶対に反対されるの判ってたから・・・」
 そう言って、頭を下げると、久しぶりに拳骨食らわされた。

「もう、お父さん達を心配させるなよ!お前から電話もらった時、父の奴ったら驚いて倒れそうになったんだから・・・」
「お父さんだって、車に乗るのに靴とスリッパ間違えるし、パジャマのまま出かけようとするし、大変だったんだぞ!」
「はい!ごめんなさい!でも、本当にありがとう!これまでお父さんと父に教えて貰ってた事のお陰で、こうして無事に解決できたんだ!本当、感謝してます!」
 しばらくは、このミミズ腫れのことは内緒にしとこうと思った桃太だった。(終わり)
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