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(妄想小説)熊のお巡りさん 第3話 [妄想小説]

 国道から、脇道に反れ、松林の中をずっと進んで行き、行き止まりになったところの駐車場に車を駐めた。
「ここまでは、知ってる奴は知ってて来るんだけど・・・、実はこの林を抜けた岩場の向こうに良い場所があるんだ!」
 謙蔵は、持って来たコーヒーポットとビーチ用セットを入れたバッグを抱え、登真を案内した。
「あれっ、行き止まりになってますよ!」
「そう思うだろ?ちょっとこっち付いて来て!」
 正面の岩を左に回り込むと、そこに小さな小道があった。それを降りて行くと、そこにこじんまりとしたキレイな砂浜が広がっていた。
「すっご〜い!キレイ・・・」
 岩場の下の窪んで、洞穴のようにヘコんだ場所に、シートを広げた。
「さあ、取り敢えずお昼にしよう!」
「はい!すぐ用意します。謙蔵さんは、コーヒーの用意お願いします!これ、コップ・・・」
 二人でお昼の準備をして、登真の作ったサンドイッチと、謙蔵の持って来たコーヒーで海を見ながら食事を楽しんだ。
「登真、でもお前、料理上手いよな・・・。このサンドイッチも、すごく旨いけど、最初の時の朝飯もすごく旨かった!」
「かあちゃんが身体弱かったから、子どもの頃からしょっちゅう手伝ってたから・・・」
「じゃあ、かあちゃん仕込みの味なんだな!」
「結構、宮崎って味濃いんだけど、うちはかあちゃん関西出身だったし、身体弱かったから、小さい時から薄味だったんです!でもサンドイッチは、俺の味ですよ!」

 食事が終わると、謙蔵のコーヒーを飲みながら、のんびりと海を眺めて過ごした。
「本当、すごくキレイだなあ・・・。こんなことなら、水着買っておけば良かった・・・」
「じゃあ、泳ぐか?」
「えっ?水着ないですよ!」
「ここ、誰も来ないから、素っ裸で泳げば良いじゃん!きっと気持ち良いはずだぞ!俺は、泳ぐぞ!」
 そう言って謙蔵は、着ていた服を脱ぎ捨て、全裸になると海に走っていって、飛び込んだっ!
「登真も来いよ!気持ち良いぞ!」
 少し躊躇していた登真だったが、思い切って素っ裸になると、謙蔵の方に向かった走ってきて、そして海に飛び込んだ!
「すごいっ!気持ち良いっ!川でしか泳いだことないから、ちょっと怖いけど・・・」
 そう言うと、登真は沖に向かった泳ぎだした。そして、10m程沖に出たところで、突然もがきだした。
「登真、大丈夫か?足でも吊ったか?」
 謙蔵が、急いで登真のところまで近づくと登真が急にしがみついてきた。
「嘘だよ!(笑)」
「こらっ、人を心配させやがって!」
 二人っきりのビーチに、二人だけの歓声が上がった。

 二人でビーチにドライブに出かけてから、謙蔵と登真の仲は、謙蔵に対して登真が軽口を叩くようになるほど、良くなっていった。そして謙蔵に対する呼び方も、斎藤さんから謙蔵さんに変わっていった。ところが、ドライブに出かけてから1ヶ月程過ぎた頃、突然登真が訪ねて来なくなった。最初のうちは、こっちに友達でもできて週末一緒に遊びに出かけたんだろうと思っていた。
「そう言えば、最近、登真君来てないですね・・・。もうかれこれ1ヶ月程来てないじゃないですか?」
「こっちで新しい友達でもできたんだろ?」
「いや〜っ、それにしても1ヶ月はないでしょ?あれだけ来てたんだもん・・・まさか何かの事故とか、病気って訳じゃ・・・」
「おい!おい!心配させんなよ・・・」
「でも・・・」
 さすがに心配になった謙蔵は、会社の寮の寮長に電話した。
「もしもし!ご無沙汰してます。警察の斎藤です。登真君、元気にしてますか?ここ随分と長いこと顔見せてないんで心配になって・・・」
「あああっ、斎藤さんですね!あの時はお世話になりました!吉川君ですね・・・。実は、お母様が、1ヶ月程前に倒れられて、それで吉川君、有給取って実家に戻ったんですが・・・。先日、お亡くなりになって・・・。向こうでの、葬儀等が終われば戻って来ると思うんですが・・・。随分と落ち込んでたんで、いつになるか・・・」
「えっ、そうなんですか・・・。判りました。ありがとうございます」
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